コラージュについて。

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京都二条 ONO*Space店主・コラージュ作家 おのみちこのブログ


私が制作している作品の技法を”コラージュ”と呼んでいます。
collage”という言葉をウィキペディアなどで調べてみると、『現代絵画の技法の1つで  フランス語の「糊付け」を意味する言葉。』と説明が出て来る通り、私の作品は筆などで描く事をせず、糊で貼付けて仕上げています。
更に『ありとあらゆる性質とロジックのばらばらの素材を組み合わせる、造形作品を構成する芸術的な創作技法。』と解説されています。色々な素材を組み合わせ貼付けて1つの絵にする作業。これが”コラージュ”です。


私がコラージュを始めたきっかけは2つ。仕事で和紙を貼り合わせたイラストを制作する機会が多かったこと。それと、奇麗なリボン、ビーズやリネン布、古裂が手元にあり、捨てるのがもったいないと思ったことです。


もともと大学では日本画を専攻し、粒子の粗い自然素材 岩絵の具などで動植物を描いていましたが、就職した先が紙製品メーカーであった為、印刷物として値打ちある絵画  “イラストレーション”の環境へ移りました。

和風の便箋や葉書を生み出す企画者になった私は、和紙や墨を使って印刷の為のイラストを沢山作りました。素材感のある 、染料で色づけた和紙や手透き和紙で表現したイラストを洋紙に印刷すると、その紙自体が和紙の風合いに思え、和の雰囲気の製品に仕上げやすかったのです。それと、和紙を貼り合わせたイラストは  何故か 手で描いた絵画よりも”生々しさ”や”描き癖の嫌味”がない  使いやすい雰囲気に仕上がると感じ、率先してこの技法での企画商品を取り入れました。

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手芸にも興味のあった私は、ほんの少しの期間でしたが、銀座にある刺繍作家 小倉ゆきこ先生のアトリエ『イグレッグ』へお邪魔して、リネン生地に刺繍糸で描かれるビーズやリボンの針仕事に触れたり、趣味の我流でビーズアクセサリーやレース編みをしたりして楽しんでいました。フリーのデザイナーとして独立した直後は、麻生地に刺繍をして表現した作品を発表する個展を開いたりもしました。手元には刺繍用のリボンやビーズ・刺繍糸・レース糸・ボタン・スパンコールなど 魅力的な素材がパラパラとあり、それを眺めるとワクワクして何かを作れそうな気分になって、いつまでも捨てられずにいました。


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 いざ自分の作品を…となった時、気がつくと 筆で描くよりも  そんな手元にある素材を組み合わせ、仕事で手慣れた貼る作業をしていました。 四季の移り変わる自然の中で 植物や虫・野鳥の生き生きした様子を表現しやすくなっていました。着つぶしたお気に入りの洋服の生地や、祖母の着ていた着物の端切れをベースに使ったりする事も楽しいと思いました。
温もりのある手芸を見るのが好きな私はきっと、針と糸で縫い合わせる刺繍やパッチワーク・洋裁などが得意であったら、コラージュではなく洋服やインテリア製品として仕上げていたのではないかな と思います。


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日本画は膠という定着材を使用して、岩を砕いて作られた砂の様な質感の絵の具を和紙に貼って(塗って)描きます。何度も塗り重ねたり洗ったりして独自の色合いやマチエルを出して行くトコロはコラージュとは違いますが、貼るという作業では同じようにも思っています。
素材そのものの質感を生かすという部分でコラージュは、素材に頼っているようにも思います。自分で良いと思う素材を自由に貼れるので、自由で楽しい。キラキラとした美しい日本画の天然絵の具をペタペタと貼ってしまう時もあります。

見る人に想像して頂く楽しみもあります。紗の着物生地をベースに貼った作品には、夏の空気をイメージしてもらえたり、古裂についた小さなシミで  作品を飛び越えて時代や年期を感じてもらえたり…。生活や流行・文化の中での記憶を呼び起こさせるのは、コラージュの面白いところではないかな …と思っています。

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ビーズや糸を貼り合わせた 透明感 立体感 影 光 。
布や和紙に見える繊維の温もり。
 上に同じ色合いの別素材を貼ると自然な表現ができるところも私に合っていると感じています。

これまでの自分の居た環境によって 偶然生まれた自分なりのコラージュ技法。
「アート」「芸術」と肩肘はらない、毎日の生活の中から生まれるような等身大の作品です。

芸術作品より、自然に生まれた生物に重きを置き、製品や生活感に魅力を感じる  何も特別な技術を持ちえていない私ならではの表現ではないかな…。
これからも変化しながら 何かしら面白く作らせていただけたら幸いです🍀。