冬休みの過ごし方。3 -染め和紙について –

京都二条 ONO*Space店主・コラージュ作家 おのみちこのブログ

切っても切れない不思議な関係・恵みの和紙

アトリエより 染め和紙(一部)


コラージュ作品によく使う和紙は、作家として制作を始める前から
仕事で使用する事の多い とても身近な存在。

今日は そんなコラージュ素材の1つ「染め和紙・手漉き和紙」について書きます。

 

緑の袋
アトリエより  緑の袋


制作スペースには、色ごとに分けた染め和紙の入ったA3くらいのサイズの袋を並べてある。
緑の袋は2つ、赤、青、紫、ピンク、モノトーン、茶、黄土、黄、そして生成りや白

(その他に、筒状に丸めた和紙の入った袋が2つほど)。
それぞれの袋から必要な毎に1枚取り出して使い、使ったらまたスグに仕舞う作業は少々面倒くさいのだけど、
それを怠ると部屋がスゴい事になってしまうので しょうがない。

 

 

アトリエより  青緑の袋

 

「さぞ たくさんの和紙を購入してきているのでしょうね」と よく言われるのだけど、
不思議なことに自分のお金で染め和紙を買ったことがほとんどない。

紙製品メーカーに勤務して和風製品のデザイン企画をしていた頃、洋紙に和紙の風合いを印刷する事で、「和」のテイストを出せるという、助かる1素材だった。
鳩居堂や伊東屋、湯島の小林などに足を運んで美しい配色で染められたボカシ染めなどの和紙を購入し、便箋や葉書・カード用に 様々な風合いの和紙を切り貼りして原稿を作った。

 

赤朱の袋
アトリエより   赤・朱の袋

フリーになってからも社員時代に表現していたテイストを買っていただき、雑誌の挿絵や紙製品の原画に「はり絵」を求められる事が多く、特別学んだりした事もないのに  いつの間にか  ”はり絵作家”のような立場で仕事をしていた時期もあった。
1枚のサイズがとても大きい和紙は、原稿1枚制作しても沢山余り、商品の素材として揃えた和紙の余りをそのまま頂く事が出来たのも有難かった。

アトリエより   青の袋
アトリエより   青の袋

1度使って余った和紙を 必要な色にうわ染めしたり重ね貼りして次の原稿に使う。そんな知恵も、和紙だからこそできた事だと思う。

美大の日本画時代から始まって、特別  和紙に強い思い入れがあったわけではないのに
気づけば側にいつもある。なんだか不思議な感じがしていた。

 

茶系の袋
アトリエより  茶系の袋

コラージュを始めた頃は「”仕事”ではない自分の表現を」という気持ちから、
なるべく意識して和紙を使わないようにしていた。というか、頼らないようにしていた。
布や糸、ビーズにスパンコール。 他の新鮮に魅力を感じる素材を使う事で 新しい技法を生み出し、「和紙のはり絵作家」というイメージから脱したかったのだと思う。

 

ようやく そんな事を気にしなくなった頃、あらためて和紙は本当に助かる存在だなぁと実感する。繊細なのに丈夫で柔軟。様々な透明感と繊維感。皺や切れ端の風合いなど。和紙の魅力は たくさんあるのだけれど、1番は花びらや葉っぱ、蕾や茎、翼や体毛などの 何とも言えない自然が作り出した生物の色味や生き生きとした艶感を表現しやすく、貼り方によって様々に変化してくれる。和紙なくしては  コラージュはできないなと思うほど頼りにしている。

何処まで行っても和紙に助けられている私。
1枚の大きな和紙は 作品や原画に使う分量を思うと 結構長持ちする。
長年の東京生活を終えてからは 京都の紙製品メーカーさんと色紙のお仕事をさせていただく機会があり、材料として会社で扱われている多くの染め和紙を頂いた。社員時代に購入した時のように、色紙で使った余り端を捨てずに置き、今でも利用させていただいている。

そして、京都へ移転して今のスペースをOPENしてからは なんと抱えきれないほどたくさんの染め和紙をいただく機会があり、今は これまで以上に豊富に持ち合わせている。


京都の太秦にある東映撮影所に勤めていた伯父の親しいお仕事仲間で 美術監督さんの奥様が「ちぎり絵」をされていたそうで、和紙もご自分で本格的に染められていたとのこと。
奥様が亡くなられた際「遺品整理したら山盛りの染め和紙が出てきたので どうか使ってください。」とご連絡をいただき、車でご自宅のある嵐山まで取りに行くと 持てないほどに染め和紙がぎっしり押し込まれた黒いゴミ袋を幾つも出してこられ、びっくりしました。

色染め(ほんの一部)
色染め(一部)


まず整理するのに何日もかかった。ご自分で板染めをされた 様々な色和紙を中心に、老舗の和紙屋さんで購入された1枚500〜1000円ほどはする美しい染め和紙も多く、少し残った切れ端もファイルに入れて丁寧に残してあった。お会いしたこともない方なのに、きっと草花をモチーフに制作されていたのだろうなと想像出来る色合いや染め具合。

「アァこの感じ!」と、何に使おうかスグに思い浮かべられる風合いばかり。きっと和紙を揃える事も楽しみの1つにされていたのだろうなと微笑ましく、それにしてもどれだけ作品を作るつもりだったのか‥とちょっと苦笑もした。
全て残したら部屋中は和紙だらけになってしまうので、思い切って古びた物は随分捨てて 手もとに残した1枚1枚を大切に・贅沢に使っています。

 

私がAtelier&Spaceとし使わせていただく事になる前は文房具屋を・そしてさらに遡ると紙屋だったこの店舗。弊店する際に沢山出て来た和紙商品も まだまだ使い切れず、実家の倉庫に保管中です。


駿河半紙を漂白した「改良半紙」、包み紙・木版の下などに使用する楮の良質な繊維で作った薄くて柔らかい和紙「天具帖紙」。文化財修理、書道用紙、賞状などに使われる「石州和紙」などなど。
手透きの貴重な和紙で、これからどんな物へ変化するか 楽しみに企画したいところ。

東京時代に買った染め和紙・京都で頂いた染め和紙・お店の倉庫に眠っていた手漉き和紙と、沢山の恵みの和紙たち。人の手で漉かれ染められた温もりのある日本独特の素材に助けられながら、これからも楽しく制作していこうと思います。

 


<コラージュ制作風景>

 

10月コラージュ 秋明菊 制作過程 2018.2.2

カレンダー用の作品制作も半ばを過ぎました。
10月は秋明菊(シュウメイギク)。実家の玄関先には毎年 夏には沙羅双樹、秋には秋明菊の花が咲きます。白くて儚げで可愛い花はホッと気持ちを楽にしてくれる力があるようなきがする。
大好きです 白い花。

 

10月コラージュ 秋明菊 制作過程 2018.2.4

下絵のトレース紙をかぶせて 茎・葉っぱ・花びらにカットした和紙を貼り合わせて行きます。
茎は黄緑色に紫の薄和紙を重ね合わせて色合いを作ったもの。
花びらは障子紙を2枚重ね、厚みを作ります。

 

10月コラージュ 秋明菊 制作過程 2018.2.6

秋明菊の魅力的な花の中芯。
産毛の風合いは薄和紙を重ね貼り、繊細な部分は刺繍糸で。

 

10月コラージュ 秋明菊 制作過程 2018.2.7

花びらに入った皺や線は同色の白い刺繍糸を貼り、
曖昧な色の蕾は 何種類かの色に染められた和紙のちょうど微妙な色彩の部分をカットして使います。

 

10月コラージュ 秋明菊 制作過程 2018.2.7

 

季節の音を奏でる秋の虫をさりげなく添える。こちらも染め和紙と刺繍糸で。
仕上げにビーズで秋露を表現したら出来上がりです。

 

<次回 Blog へつづく>



*今年もお声をかけていただき、チャリティーに参加いたします*

毎年京都の百貨店にて開催される、途上国や災害被災地への支援を目的としたチャリティ・オークションイベント『芸術家と文化人の作品展』。オークションで得られた収益金は、途上国支援の活動を展開する京都の国際協力NGO・日本国際民間協力会(NICCO・ニッコー)に寄付されます。

私は今年もこれまで制作したコラージュ作品の中から3点ほど寄贈させていただきます。
京都大丸へお買い物の折りには是非お立ち寄りください☆

場所:京都大丸 6階イベントホール
会期:2月15日(木)〜19日(日)